「うみのこ」概要

船体2

船の教育的機能

船には次のような教育的機能があります。「フローティングスクール学習」においては,これらを有効に働かせることが重要です。

1. 船は人を鍛える

船という限られた機能・空間の中では、絶えず工夫と忍耐が要求される。この環境下での生活は、便利な日常生活に馴れ過ぎた人に、生活の原点を考えさせ、自らを厳しく鍛え、たくましい気力と体力を育てる。

2. 船は規律を教える

船という小社会の中で楽しく有意義な生活を送るためには、自己の欲求を抑制し、規律を守ることが必要となる。また、生命を守るために、船長やリーダーの判断や指示に絶対従わなければならないこともある。規律が自己や他者を束縛するものではなく、自分や仲間を生かすためのものであるということを明確に認識させる。

3. 船は心と心を通わせる

船は、初めて出会う人と気持ちよく挨拶を交わしたり、話したりして自然と交流を深めることができるという不思議な力を持っている。そして、人との出会いが印象的となり、それぞれの立場を尊重し合いながら、自らを高めさせる。

4. 船は人の視野をひろげる

海や湖から見る景色は、陸上での見馴れた景色とは違ったものを語りかけてくる。遠くかすむ山々、海岸・湖岸や島々の様子、またそこに生きる生物たちなど、視点移動する船から周りを見つめることは、たとえ見馴れたものであっても新鮮な感動を呼ぶ。それは自分や自分の生活、また故郷などを新たに見つめ直す機会となり、人の思考の範囲を広げ、深める。

5. 船は「夢とロマン」を与える

海や大きな湖は、それを見る人のまだ見ぬ世界へのあこがれや、冒険心をかきたてる。また、はるかかなたへ人や物を運ぶ船は、人の活動範囲・限界点を一気に跳躍させるという点で、人に限りない「夢とロマン」を与え続けてきた。船は、特に青少年に自らの将来を切り拓いていこうとする気概を持たせる。

びわ湖フローティングスクール誕生の背景

びわ湖フローティングスクールが生まれた社会的背景としては、次の三つのことが挙げられます。第一に昭和44年以後の「滋賀青年の船」・同55年以後の「少年の船」での成果、第二に昭和52年の「ゆとりと充実」を特色とした小学校学習指導要領の改訂、第三は昭和57年の「学校教育の充実と、青少年の健全育成を目指す滋賀県教育困難事情打開に関する協議会」の中間報告です。

当時の青少年の非行の状況を教育の危機として受け止め、学校・家庭・地域全てにわたってその教育力を高めていかなければならないという認識に立ち、県民と行政が一体となって滋賀に新しい活力のある教育を創造していく必要があるという合意が県民の中に生まれました。

こうした中で、昭和57年3月県議会において「青少年の健全育成について、最近における非行の増加と低年齢化・一般化の傾向に対処するため、その背景にある子どもの甘えや大人の過保護などを見直し、厳しい生活体験と集団訓練によりたくましい少年づくりをすすめるため」に「滋賀県立びわ湖フローティングスクール事業の設置および管理に関する条例」が議決されたのでです。

こうして、学校教育の一環としてびわ湖フローティングスクール事業は誕生したが、また同時に、当時から琵琶湖の環境問題に対する県民意識が高まりつつあったという側面も見逃すことはできません。

沿革

昭和57年(1982年)3月 26日12月28日県議会においてびわ湖フローティングスクール事業を議決
昭和58年(1983年)2月 8日建造起工式を挙行
3月 5日船名・シンボルマーク・標語を決定
7月 5日「うみのこ」命名・進水式を挙行
8月 2日開校ならびに就航式を挙行
昭和59年(1984年)4月 16日本格航海を開始
8月 28日皇太子同妃両殿下「うみのこ」を視察
昭和60年(1985年)3月 31日高速艇「かいつぶり2号」搭載
昭和63年(1988年)3月 31日カラー魚群探知機・船舶用レーダー設置
平成元年(1989年)1月 27日児童学習航海10万人乗船
平成 5年(1993年)8月 22日就航10周年記念式典挙行
平成 6年(1994年)11月 9日児童学習航海20万人乗船
平成 7年(1995年)8月 25日「湖の子」体験航海(未乗船児童対象)開始
平成11年(1999年)7月 2日琵琶湖・淀川流域小学生交流航海開始
平成12年(2000年)7月 1日「『うみのこ』から世界へ発信!」情報交流事業を開始
平成13年(2001年)4月 20日BDF(バイオディーゼル燃料)による航行開始
5月 1日児童学習航海30万人乗船
11月 12日秋篠宮同妃両殿下「うみのこ」を視察
平成14年(2002年)3月 19日「うみのこ」主機・補機交換
平成15年(2003年)7月 20日就航20周年記念式典挙行
平成17年(2005年)3月 28日船体に滋賀県シンボルマーク『Mother Lake』を塗装
平成20年(2008年)6月 4日児童学習航海40万人乗船
平成21年(2009年)3月 30日「うみのこ」船内トイレ汚水管全面改修
平成22年(2010年)3月 30日「うみのこ」4階屋上に太陽光パネル、風力発電装置設置
平成24年(2012年)7月 13日第5回海洋立国推進功労者表彰にて内閣総理大臣賞を受賞
平成25年(2013年)8月 4日就航30周年記念式典挙行
平成27年(2015年)5月 18日児童学習航海50万人乗船
平成28年(2016年)11月 25日新学習船建造起工式
平成29年(2017年)

7月25日

12月28日

新学習船の名前が「うみのこ」に決定

命名進水式

平成30年(2018年)

3月11日

5月13日

6月14日

12月22日

「うみのこ」引退セレモニー挙行

シップ・オブ・ザ・イヤー2018「小型客船部門賞」を受賞

新学習船「うみのこ」出航式を挙行

児童学習航海55万人乗船

令和2年(2020年)感染症拡大防止のため全航海一日で実施
令和3年(2021年)感染症拡大防止のため全航海一日で実施
令和4年(2022年)

8月26日

感染症拡大防止のため全航海一日で実施

児童学習航海60万人乗船

令和5年(2023年)

7月18日

8月11日

山縣勝見賞特別賞を受賞

就航40周年記念式典挙行

学習船「うみのこ」の特徴

「うみのこ」は、県内すべての小学校及び特別支援学校、各種学校の5年生を対象とした学習船であるため、児童が安全に、安心して学びを深めることのできる学習環境づくりに重点を置き、次のような施設・設備に工夫と配慮が施されています。

1. 安全な学習船

旧船より喫水が50cm深く1.5mとなり、さらに2基のZ型推進装置を採用し航行性能は良好であり、港への離岸・接岸の際にはポンプジェット式バウスラスター2基を併用して、安全かつ迅速に行うことができる。

安全設備として、転落防止のための縦桟の柵、就寝中の安全を確保する寝ぼけ警報装置、安全監視テレビカメラ、夜間防犯センサー、25人乗り救命筏、救命胴衣、救命浮環、脱出用縄梯子、救命用高速艇などを配備し、万全を期している。

2. 安心できる学習船

電気推進方式を採用することで、より環境に配慮した船となり、船内の音環境も改善され落ち着いた生活を送ることができる。

インクルーシブ教育に配慮し、船内の環境整備を重視している。移動用のリフターやエレベーター、スロープ、高さ調整が可能な食卓、多目的トイレ、点字ブロックなどを整備し、ユニバーサルデザインを考慮した設計となっている。また、保健室・看護室を設け、児童がより安心して生活できる環境を整えている。

3. 学びが深まる学習船

教育施設として、船内での活動が多様に展開できるように教材備品をそなえている。5階層からなる船内には、児童が一堂に会することができる多目的室や学習室兼食堂、科学的な学習を行う実験室などを設け、様々な学習活動を展開できる。

船内は無線LAN環境を整備し、航海機器から得られる航路や水深などのデータ、びわ湖の風景画像、生き物図鑑などに、タブレットパソコンからアクセスすることが可能である。また、タブレットパソコンソフトを活用して、意見の交流や思考の整理を行うこともできる。

「うみのこ」の概要

1. 船内図および主な船内施設

新うみのこ4階マップ
新うみのこ3階マップ
新うみのこ2階マップ
新うみのこ1階マップ
新うみのこ地下1階マップ

防災倉庫

災害に備え、応急対策の毛布などが保管してある。

 教職員室・講師室・所員室

教職員室はB1階に6室、2階に2室ある。講師室はB1階に、所員室は1階と3階に設けている。B1階の教職員室「沖島」は定員6名、それ以外の部屋はベッドが2床で定員2名である。

管理室

FS職員の部屋。放送設備と防災無線、監視モニターおよび管制器等がある。船内無線LANサーバーを設置し、各機器からデータを収集し、タブレットPC等へデータ配信できる。

学習室兼食堂

1階にあり、椅子固定式テーブル21脚・椅子移動式テーブル2脚、合計23テーブルで、1テーブル8名(6名のテーブル1台)、計182名が一堂に食事できる。椅子移動式テーブルは、車椅子のまま食事ができる。

厨房

火災防止のため、ガスを使わず、電磁調理器で調理する。

EV・リフター

車椅子に乗ったまま乗下船できるリフター、ストレッチャーに乗ったまま1階から4階まで移動できるエレベーターを設置している。

 活動室(宿泊室)

2階廊下を中央にして左右に6室ずつある。各室は隣室と2室続きになっている。各室の児童定員は16名(10室)または10名(2室)。右舷側は琵琶湖にすむ魚の名前、左舷側は滋賀県に咲く花の名前をつけている。各室には、児童の荷物を置く棚があり、ロッカーに救命胴衣・毛布・枕が収納してある。また、折りたたみ式机を収納し、船内活動に活用できる。

シャワー室

2階後部にある洗面所は、左右各17人ずつ同時に使用できるようになっている。洗面所の舷側には脱衣所とシャワー室がある。シャワー室は、左右各16人ずつ同時に使用でき、それぞれは壁で仕切られており、プライバシーに配慮したつくりとなっている。

乾燥室

雨や雪で濡れた衣服類や雨具を乾燥させるときに使用できる。

保健室

2階にあり、ベッド3床・薬品棚・シャワー・浴槽を備え、けが人や急病人への応急手当に利用できる。

看護室

児童が別室で就寝する必要があるときや休息する場所として利用できる。ストレッチャーを2台設置し、多目的トイレへの移動が可能である。

 Negルーム(多目的室)

「うみのこ」の中で最も広い部屋である。航海情報モニターや魚群探知画像モニターなどを備えている。また、電子黒板やプロジェクターを設置し、学校における集会室・視聴覚室として、開・閉校式、朝・夕べの集いなどに使用する。

実験室

学習で使用する備品を数多く置いている。デジタル顕微鏡、航行中でも各所で採水が可能な採水装置を備えている。

大会議室

3階前部にあり、FS職員と教職員との打合せ会などに使用する。

3階甲板

3階後部にあり、乗船者全員が集合できる。避難訓練や展望活動などに使用する。

高速艇

カッター活動の巡視や落水者を救助する際に使用する。

小会議室

引率や講師の打合せの他、研修、視察等でも利用できる。

見学室

操舵室の後ろからガラス越しに操船の様子や前方の景色を眺めることができる。

湖水滅菌装置や「うみのこ」に関する各種学習パネル等を展示している。

 操舵室

操舵の他、進路の監視、母港との連絡等が行われる船の中枢部。スクリューの角度を変え、進む方向をコントロールするための操船用制御装置を備えている。霧や吹雪等で視界が悪い時に使うレーダー指示器や船内の異常をいち早く知ることができる監視モニターなどがある。

2. 船内施設の概要

学習船「うみのこ」の概要

全長 64.91m
全幅 12.0m
計画満載喫水 1.5m
総トン数 1355トン(1総トン = 2.8713立方メートル)
航海速力 8~9ノット(1ノット = 時速1.852キロメートル)
航続距離 約300海里(1海里 = 1.852キロメートル)
最大定員
()内は大人の人数
宿泊 乗船者180(90)  名 職員43名
一日 乗船者330(165)名 職員43名

資料

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